著者の三瀬憲子さんは、米国留学後、台湾で就職し台湾人と結婚した方で、これまでに何冊か台湾にまつわる著書を書いている。
この本は、「台湾人はなぜ親日なのか」ということについて台湾の人々にインタビューしたものなのだが、インタビュー相手の中心は日本統治時代に幼・少年期を送った台湾のご老人たちである。皆さん80代以上なので、話が聞けるのもそう長くは続かないであろうから、小さな本だがその意味で貴重だと思う。
彼らは、日本語で日本人と同様な教育を受け、好むと好まざるとに関わらず日本人としてアイデンティティーを形成されることになる。戦中は、日本と同様に空襲に見舞われ、食べ物も欠乏し、なかには国(日本)のために戦場に行った人もいる。それだけでも、大変な苦労をさせてしまったわけだが、戦後は国民党政権下で、アイデンティティ失うという苦労も味わうことになる。
それでも彼らが親日であるのは、当時日本人から律儀で誠実であることの大切さを学び、それがその後の人生の支えになっていたということらしい。子供時代を懐かしむ心情もあろうが、みな当時の日本人の先生達に感謝しているのがとても印象に残った。げに教育の力というのは、素晴らしくもあり、恐ろしくもある。翻って、今の日本人や日本の教育は、かなりピンチである。
当時の日本人教師の方々は、どんな人たちで、どういう経緯で台湾に渡り、どんな気持ちで台湾の子供達に向き合っていたのか。そちらのほうにも興味が湧くのだが、ほとんどの方は既に鬼籍に入り話を聞くことができないのが残念である。